出版業界の産業としての在り方

 書店の息子として得られる微々たる見識から出版業界について論じる。

 出版業界は製品を作る作家、出版社とそれを販売する書店とがぶつ切りになってしまっているのが現状ではないだろうか。いや。この状態は他の業界でも然りである。例えば、農業然り。電機産業然り。ただ、これを変革する必要があるのではないか。

 これに成功しているのがユニクロである。ユニクロは、多くの地域に店舗を持ちマーケティングを行うだけでなく、それを製造や開発へフィードバックすることで付加価値をつけることに成功していると伊藤元重(2015)は指摘している。出版業界も販売現場で得られた顧客ニーズを集約し、製造現場、つまり作家や出版社の編集担当にフィードバックする仕組みを構築しなければならない。之が私見である。それが、どういう形になるかはわからない。大手チェーン書店が情報集約した結果を報告するのか、取次がマーケティングを行うのか、書店も巻き込んだ編集会議を行うのか。いずれにしても、製品の価値を高め、市場を拡大する(読書人口を増やす、購買意欲を高める)工夫は検討しなければならない。

震災後の貿易収支について考える

  まずは、貿易収支の推移を見ていきたい。全体的な推移を見れるようにするために2001年からデータは取ってあるが、議論したい点は2011年以後の貿易収支の状況である。

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※単位:億円 

※第一次所得収支…対外金融債権・債務から生じる利子・配当金等の収支状況を示す。

 

●2011年4月以降:

震災以降、輸入は増加の一途をたどり、2011年4月以降は貿易収支赤字に陥っている。輸入が増加した原因は、エネルギー価格の高騰といわれている。ただ、貿易収支赤字となっている原因はそれだけではない。EU圏への輸出額はリーマンショック以後なかなか回復していないことも一つの要因だろう。

 

●2012年12月以降:アベノミクスの効果は?

輸入はそのまま伸び続けている。これは円安効果が大きいだろう。輸出についても横ばいからやや上昇傾向にあるが、数量は増加しておらず貿易収支黒字にまでは至っていない。ニュースでは「Jカーブ効果が発生しない」と叫ばれていた。円安=輸出増という等式が成り立たなくなってきている。何故か。

一つは、日本企業の国際競争力が低下したことがあげられよう。特に、電子機器産業の衰退は円安によっても輸出が伸びないその一因といえる。また、自動車産業の生産の海外移転も大きな要因だろう。

 

●2014年9月以降:輸出・輸入それぞれの拡大と縮小

この変化は、原油安と円安進行による効果が大きい。円安による輸出金額の上昇に加え、輸入増も原油安により部分的に相殺されることで財政赤字の改善につながってきている。2015年2月の輸出減は中国の春節による影響だという指摘があるが、それは毎年のことであり、本当にそれで説明できるのか疑問が残る。

 

 ●今後の貿易収支はどうなるのか

理論上は貿易収支は①国内の景気、②海外の景気、③為替の動向に左右される。また、貿易収支自体の悪化よりも、その背後にある日本の産業競争力の劣化が問題であろう。経常収支赤字による財政赤字のファイナンスも問題である。

 

以上を踏まえると、①は横ばい、②は中国経済の不況、米国の利上げにより楽観視することはできない、③は横ばいとすると、短期的にはあまり楽観視できない。やはり、海外経済の動向に左右されるだろう。但し、原油安がまだまだ続いており、交易条件が改善していることはプラスの要素である。

長期的には、日本に如何に産業誘致するか、また日本での設備投資を如何に行ってもらうかがポイントとなろう。法人税減税はその一つの処方箋といえる。